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「それで、陛下のお味はどうだったの?」
 腰を大きくグラインドさせながら、女は己の下の男に尋ねた。
 男は女の臀部を掴みながら、女の動きを手助けする。
 動きに合わせて、女の見事な金髪が男の肌の上を滑るように揺れた。
「どうって言われましてもねぇ」
 仰向けに寝転がり、上に女を乗せている男は右上の空間を見るように視線を泳がせた。女の質問に対する答えを探しているらしい。
「陛下は初めてだったのでしょう? いくらあたくし秘蔵のお薬を使ったとはいえ、あの陛下が貴方の為に頑張って腰を振っただなんて、考えるだけで濡れてきちゃうわ」
 じゅぷちゅぷと、卑猥な水音が男と女の交わっている場所から響いてくる。
 防音設備の整った、この豪華客船の一室は、外へ音が漏れないのと同時に外からの音も伝わりにくい。
 音楽や外の物音が聞こえないこの部屋で、その淫猥な音はよく響いた。
 喘ぎ声が時折混じりながら、二人の会話は続いていく。
 話の中心は、『陛下』だ。
「出来ることなら、あたくしが陛下に快楽を教えてさしあげたかったのだけど、陛下ったら頑なに拒むのだもの。話ぐらい、聞かせてくれても良いんじゃなくて?」
 ねぇ、グリエ……と女はにやりと笑んだ。
 男はふぅと溜息をついて、上体を持ち上げる。
 女の上品な唇に口づけをして、女の腰を上下に動かす。
「あん! そんなに動き出しても、誤魔化されなくてよ。さぁ教えてちょうだい、陛下のお味を」
「上王陛下、それは野暮ってもんでしょうに」
 はっはっと、二人の呼吸が上がる。
「あら、あたくしは聞きたいのよ。その方が、一層燃え上がるというものでしょう?」
 女はするりと白く長い腕を男の逞しい首に廻す。
 耳元で囁く女の声は、色気の塊だ。
「それに、陛下の話をし出してから、貴方のものの硬さが増したわ。気のない振りをしてもダメよ。あたくしにはお見通しなのだから」
 うふふと女は笑う。
 この世の者とも思えぬほどに妖艶な彼女は、男の耳朶をゆるく噛んで、さぁと促した。
 腰の動きは止まっていない。
 男はもう一度溜息をつきながら、脳裏に思い浮かべ始める。
 ほんの数日前に起こった出来事。
 汗で額に張り付く黒い髪、潤んだ黒い瞳。
 己の上で必死になっていた、双黒の魔王の姿を。
『なあ……気持ちいい?』
 ええ陛下、とても。



渇走






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