<戻る



SS4



「坊ちゃん」
 普段の雰囲気とはまるで違う、真剣な瞳。
 優しい声音。
 繰り返されるキス。
「やっぱ、もう、ダメだって!」
 ぐっとヨザックの体を押し退ける。
 従うように、ヨザックも押し退けられる。
 押し退けられる気がなければ、おれの力じゃびくともしないってのは分かっているから、退いてくれるとホッとしてしまう。
 けれど。
「ヨーザックー。おれの下半身に、なんかカタイものがあたるんですけど」
 ヨザックが退いたのは上半身だけで、下半身はさっきよりも密着している勢いだ。
 むしろ、押しつけられている気がする。
「そりゃ、坊ちゃんとこうしてりゃあ、硬くもなりますよ」
 当たり前だと言わんばかりの口調。不敵なその表情。
 ぐりぐりと押しつけられる下半身。
 そんなに押しつけられると、嫌でも意識してしまう。
 今までの事を思い出して、心の中がおかしくなってしまう。
 だから、触ってくれるな。押しつけてくれるな。
 ダメだ、ヨザック。
「……坊ちゃん」
 一変して、穏やかな表情をして、子どもをあやす時のような声で名前を呼んでくる。
 ヨザックの大きな手が、それが当たり前であるかのようにおれの股間に触れた。
「坊ちゃんも、意識しちゃいました?」
 悪戯っぽく笑いながら、ゆっくりと、下から上へと掌全体で撫で上げられる。
 その刺激に、体がびくりと震えてしまうのは体の構造上仕方ないことなんだと自分に言い聞かせる。
 そう、仕方がない。仕方ないことなんだ。
 耳元で囁かれる声に、体が震えてしまうのも。
「硬くなっちゃいましたね」
 服越しに何度も撫で上げられる。時々スピードや力の強さが変わって、それが快感へと導く。
 ヨザックの肩をぎゅっと掴むと、ヨザックの左手が腰に回ってきた。
「その気になってくれたみたいですし、ベッドに行きません?」
「……グリエちゃんのスケベ」
「勿論!」
 ヨザックの笑顔は、晴れやかだった。


end
2005.12.28
<戻る